同業者は競合店か?
競合店から学ぶべきことはないのか?あなたは普段、何をどのようにリサーチしていけばいいのか?お客様の声をどう活かしていけばいいのかを考えてみます。

社長の身体は、いくつ必要?
飲食店など社長自身が料理人であったり、営業中は一歩も外に出かけられないようなプレーイングマネージャーだった場合、競合店リサーチをご自身が行うのはほとんどの場合難しいです。
それは、社長ご自身が提供する味が店のメイン商品ですから、そうなると営業中は当然のこととして、仕込みや仕入れなど社長の仕事は多岐にわたります。近隣にある競合他店や最近流行りの店にもリサーチしてみたいでしょうが、店の運営がある以上、なかなかそういうわけにもいきません。
近くに開店したお店や人気繁盛店のことが、本当は気になっていませんか?
私のお客様にも多くの飲食店があります。
ご訪問させていただき、いろいろとお話を聞きます。
何度かのご訪問を重ねると、互いに親近感も出てきて話題は多岐にわたります。ところが、そのような時期になると必ずと言っていいほど出てくるワードがあるのです。

ケース1:この先に出来た競合店を知ってる?常連さんから聞いたのだけど、味なんて全然良くなかったらしいよ!

ケース2:最近の人気繁盛店だと聞いたから、その店の前を通ってみたんだよ。車なんて三台くらいしかも停まってなくて、あれじゃ上手くいかないのじゃないのかな。

ケース3:混んでる、混んでると聞くからバイトの子たちに偵察に行ってもらったんだよ。そしたら塩辛くて食べられたものじゃないと言って帰ってきたよ。
どうでしょう?
あなたの周りでも、このようはお話を聞いたことがありませんか?
そうですよね。これは愚痴です。
こんなことを言っていても自店の売上がUPすることはありません。
ところがです!私には単純な愚痴とは聞こえないのです。
このような発言の裏側に何か大きなヒントがあるのではと思い考えてみました。
お客様や身近な人の本当の声
ケース1では常連さんの話です。
常連さんですから、このお店のファンであり、社長とも人間関係が出来上がっています。
私たちは自分がいる環境内において社会性を重視して暮らしています。ファンであるからこそ、このお客様にとっては他の店は問題外なのですね。
いや、実は味的には、まあまあ納得の出来たものだったのかもしれません。
しかし、社長の前では、そのような本音はなかなか言ってもらえないのでしょうか。
逆に、忌憚のない意見を言ってくれるお客様がいらっしゃるのなら、それは本当に本当に大切にしていただきたいものです。
ケース3は利害関係にありますから、もっと言いづらい状況かもしれません。
自分ではリサーチしていない
ケース2ではどうでしょう?
これは社長自身が出向いて行ってますが、店内にも入らず、当然ながら競合店の商品(味)を確かめていません。
駐車場の車の数を通りすがりに数えただけです。
リサーチと呼ぶには、なんとも少ない情報です。
この競合店の前を社長が通ったということは定休日の平日か、仕入れにでも出かけた時間が予測されます。この日のこの瞬間だけで本当に競合店の実力がリサーチできたと言えるだけのデータが取れたのでしょうか。
しかし、私は、この社長さんや似たような発言をされた事のある方を批判する為に書いているのではありません。
これはマーケティングの話です。
専門店だからこその思考
何の業種の社長もそうでしょうが、やはりその道のプロであり専門家です。
仕事は勿論のこと、お客様の為に全力を傾けています。
経験から裏打ちされたプライドもあります。
ラーメン店は、やはりラーメン店の社長なのです。
ラーメン店は、やはり
ラーメン店の社長なのです。
24時間365日、麺のこと、スープのこと、餃子のこと、チャーシューのこと、仕入れた野菜の鮮度から店内の空調のことまで、お客様のありとあらゆる満足を追求して、ずっとラーメンのことを考え続けています。
寝ても覚めてもずっと店の味のことです。
だから近くに進出してきた新規オープンの競合店や、耳に入ってくる繁盛店の噂が気になりますよね。
ラーメン店は、どこを見ても敵ばかりです。
隣の街にも有名店があれば、夕方のニュースではラーメン特集をやっているではありませんか。
日本の国民食と言われるほどのラーメン。街はラーメン店で溢れかえっています。
自分の店しか考えていないと大きな過ちを犯す
ところがです!
ラーメンが大好きな私達ですが、
毎日、ラーメンのことだけを考えないのです。
カレーも食べたければパスタもいい。
たまには野菜も食べなくちゃとか、焼き立てパンもいいなとなります。
私はカレーも大好きですが、さすがに毎日食べるのはきついです。
だからバラエティに富んだ食事がいいと考えて、外食時にはいつも悩みます。
近隣の同業他店だけの動向が気になっているのは当然のことです。
新規オープンの折込チラシが入れば気になって仕方ありません。
インターネットのクチコミ情報で、他店の美味しそうな写真に、ものすごくインパクトのある評価が書かれていたらショックです。
「あの店が、そんなに良いのか!」
と息巻いたいたとろで、動揺している自分には嘘がつけません。
さらにクチコミ情報を探し続け、とうとう見つけた自分の店の紹介欄に悪評判が掲載してあったらどうでしょう。
もう、やる気も自信も失ってしまいます。
情報の入手先が違う
ご自身が店舗に常駐している場合、店の評判はどこから入手しているでしょうか?
ほとんどの場合、来店されているお客様かスタッフやご家族などの近しい人、または仕入れ先の業者さんということもありますが、これも利害関係がありますので、正確な情報や客観的な評価としての判断基準にはなりません。
社長にとっての味方からの視点でしか情報を入手していないのです。

社長「新メニューの濃厚味噌ラーメンの味付けはどうかな?」

奥様「うん、いいんじゃない」

社長「いいって、どこが良いんだよ」

奥様「うーん…」
「…」
「…」
「味が濃くなって季節的にも合うんじゃないかな」

社長「君達は、どうかな?」

アルバイト大崎君「大将、美味いっす!俺、この味、好きですっ」

社長「お~そうか!好きか!」

アルバイト大崎君「はいっ!なんていうか…濃厚っす!」

社長「そりゃそうだよ。濃厚味噌なんだからさ(笑)」

アルバイト智子さん「私も好きです。美味しいです。でも、これだけ濃厚ですと餃子の味噌だれのセットでご注文されたお客様は味が濃すぎませんか?」

社長「こういう建設的な意見が欲しかったんだよ。そうか、味噌だれとは合わないか…」

奥様「そう言われてみると、昨日、お客様から味噌だれの味を変えたの?と聞かれたわよ。あなた、味は変えてないんでしょ?」

社長「変えるわけないだろ!でも確かに濃厚味噌スープとセットにすると少しインパクトが出過ぎるかな?よし、ともちゃんの言うように餃子セットには味噌だれはオススメしないようにしよう」

アルバイト智子さん「でしたら私、POPとかメニューブックもパソコンで作り直してきます」

社長「ともちゃん助かるよ!ホント嬉しいよ」
全員がにこやかなムードになり、無事に終了した試食会ですが…
何かが違いますよね?
新メニュー「濃厚味噌ラーメン」の味付けをチェックするのが今回のミッションだったはずが、アルバイトさんの個人的な感想から始まり、いつも間にか餃子の味噌だれとの組み合わせになっていき、最後にはセットメニューを変えようとなり終了しました。
社長は、ご自身が苦労されて作った味がスタッフ一同から前向きな意見が出たので嬉しかったでしょうし、自信にも繋がったかと思います。
奥様は、日頃からのお客様とのコミュニケーションを意識していましたので、餃子の味噌だれについて意見が出せたので安心していると思います。
この経営者ご夫妻の人柄も良いのでしょう。
アルバイトの二人も積極的な意見や仕事をしてくれているようです。
しかし、意見を聞いているのは奥様がヒアリングしたお客様を含めて全員が社長の味方だけなのです。
では、どこから有益な情報を見つけたらいいのか?
それは簡単です。あなたの街に溢れています。
競合店、繁盛店、新規開業店、既存店、この道の先駆者達、成功者、中には失敗者も…。
同じ風土、立地環境で戦っていて、同じ商圏のお客様の満足を願っている同業者という位置づけでよく観察してみましょう。
繁盛している店のことも、大手FC店の営業スタイルも、全部をひっくるめて勉強させていただくと、いろんな手法やコンセプトが見えてきます。ただし、知恵を絞らない楽をする為の真似はダメです。
リサーチから自店への展開まで
1.まずは競合店の「売り」や「特徴」を観察しましょう。
1.まずは競合店の「売り」や「特徴」を観察しましょう。
「売り」や「特徴」とはストアコンセプトです。あなたには競合店が、どのように見えているか?また競合店を利用している消費者の動機は、どのような価値から発生しているかということです。
繁盛している店には必ずコンセプトがあります。誰(メインの客層)をターゲットと想定して、どんな商品やサービスを作り出し、お客様にどのような店として評価していただきたいのか?店が目指す立ち位置です(ポジショニング)。
競合店のストアコンセプトとはどのようなものかを判断してください。
2.競合店のストアコンセプトや状況が解ったところで、今度は自店の繁盛プラン作りです。
2.競合店のストアコンセプトや状況が解ったところで、今度は自店の繁盛プラン作りです。
【新規開店】のケースは別の章で話しますので、ここでは既存店舗の場合で考えます。
大切なのは、やりたいことや、やれることを無計画で打ち出すより、あなたのお客様は、あなたのお店に何を求めているかということです。
ファミリー層が一家団欒の時間を過ごしたいと思っているのか?
ヤング層が思いっきりお腹いっぱいまで食べたいと思っているのか?
お客様が求めていることで、ストアコンセプトは大きな違いがでます。
●ファミリー層は各年代に好まれることがポイント
メニュー→質・量・種類(すき家さんが行っているミニ盛りからメガ盛りなどは参考になる)
店舗→空調、お子様やお年寄りに向けた店内外(バリアフリーやお子様用エリアやグッズ)
運営→ファミリー層向けに特化した接客(メニューブックの工夫や店員の説明力・声掛け)
サービス→世代別に適応したサービス(会計時の粗品の工夫や次回利用のクーポン
※スマホ利用か印刷物がいいか)
●ヤング層ならインパクト重視
メニュー→質・量・種類(量やセットメニューを充実、消費者発信型メディアであるfecebook、twitter、ブログ等で拡散していただく目的なら、流行食材や盛り付け、ネーミングも重要です)
店舗→スマホ充電/Wi-Fi設備、大人数にも対応できる空間作り
運営→営業時間の見直しなど、元気で気の利いた接姿勢客
サービス→SNSと連動したサービスを展開。同じターゲット層のお店とコラボ企画も良い。
あなたは、どのようなお客様にご来店いただき、どんな感想を持っていただきたいですか?
3.そもそも競合店とは、どのようなことでしょう?
3.そもそも競合店とは、どのようなことでしょう?
頑固一徹の経営方針で、麺にもスープにもチャーシューにも拘り抜いている「しょうゆラーメン専門店」と「安くて早い!深夜2時まで営業」を看板にしている店とでは、ラーメンというカテゴリーは同じでも、ターゲットにしているお客様は違います。
ターゲットが違うということは、競合にならないということです。
あなたはこれからコンセプトを見直し、経営改革をしようと考えています。
だからこそ、コンセプトなきモノマネはダメなのですし、わざわざ同業者の得意分野に飛び込まずに、あなた自身の得意な部分で勝負してみてはいかがでしょうか。
4.では、何を売るか?
4.では、何を売るか?
あなたの商圏で評判をいただいている同業者のことはわかりました。
コンセプトを決めるには集客したいお客様が何を求めているのかを想像しなければならないことがわかりました。
また、同業者のモノマネをするのではなく、自分の得意な部分を探すということがわかりました。
孫子曰く「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」ですが、情報が溢れかえった現在社会においてビジネスを成功させるには、もう一つ大切な事があります。
それはベネフィットです。
私の考えるベネフィットとは、商品やサービスを購入した後、又は購入している最中、もっと言えば購入を考えている時に味わう幸福感です。
5.最強の武器「ベネフィット」を売る
5.最強の武器「ベネフィット」を売る
ある家族を例にしてみます。
単身赴任のお父さんが週末に帰宅しました。
家族そろってショッピングモールに行き、子供達には好きな物を買ってあげました。
家族団欒の時間はたまらんのです!
最後の仕上げは夕食です。
ここで赴任先で鍛えた男の手料理といきたいとこですが、さすがに疲労感は隠せません。
何にしようかと相談しているうちに「お父さんの好きなものを、皆で食べたい!」と、小学二年になった息子が…。
「嬉しい!なんと嬉しいことか」っと思ったが、俺としては行きたい店があるのなら最初から提案していたし、それに早く帰ってビールが飲みたいという本音もそろそろ出てきた。
「そうだ!お父さんが子供だった頃に、おじいちゃんによく連れて行ってもらったラーメン屋さんがあるんだよ!今日はそこにしよう!」
うんうん、あそこなら良い!
味は懐かしいし、皆が喜びそうなメニューだって豊富だ。
何と言っても店主夫妻の厨房での掛け合いが良い。
渡る世間は鬼ばかりに出てくる「幸楽」みたいだ。
興味津々で笑いがこらえられないかも…。
それに俺がガキだった頃の味を、今度は子供達に教えたい…。
伝えたいこと
教えたいことが
いっぱいある。
このケースの場合、ベネフィットがあちこちに存在しないでしょうか。
ベネフィットとは、商品購入自体の喜びだけでなく、その先にも後にも存在する有形・無形の幸福感だと思うのです。
この幸福感をお客様に提供できるのは、あなただけです。
同業者の成功事例から学ぶことは多いですが、あなたがお客様を大事にされる心は、あなたしか具体化できません。
これこそサービスの差別化でありますし、同業他社を気にする必要もない領域の話なのです。
長くなりましたので最後に整理します。
店舗経営者がリサーチをする場合、コストと時間がかけられないというが現実がある。
その為、競合店の実態がつかみづらい。
身近な人からの言葉による情報は、客観的判断の材料にならない場合もある。
実は、競合店とは敵ではない。同じ商圏での成功事例として尊敬するべきである。
ストアコンセプトのない経営は危険。
ことわざに「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」とあるが、プロの猟師は猟銃のちゃんと練習もするし、何よりターゲットの習性や動向を良く学んでから猟に出る。近くの山で適当に撃っていたら事故になる。
価格競争には参加しない。真心込めた商品やサービスを適正価格で販売する。
それにはベネフィットを追求するのが正しいやり方。
あなたしか作れない最高のベネフィットを提供して、お客様に喜んでいただきたいですね。
安売り戦略の最適化
安売り戦略の最適化