2022年02月15日

災害時に介護が必要な高齢者や障害者など「災害弱者」の避難はどうする?

災害時に介護が必要な高齢者や障害者など「災害弱者」の避難はどうする?

近年、異常気象による大きな自然災害が増えています。今まで台風や大雨などの災害と無縁だった地域でも例外ではありません。いつ、どこで起きてもおかしくないといえます。

毎年のように起きる自然災害で、皆さんの防災意識が高まっていることと思います。特に、自力での避難が難しく避難時に支援を必要とする「災害弱者」にとっては、自然災害が直ぐに命に関わる問題です。避難が難しいだけでなく、通常の避難所での生活も困難な人達もいます。そのような要介護者を抱える家族がとるべき災害対策が、各市区町村において行われていることをご存知でしょうか?

「災害弱者」とは

「災害弱者」とは

災害弱者とは、自力での避難が難しく、避難行動に支援を要する人の事です。(防災行政上は「要配慮者」という)

災害弱者に当てはまるのは以下の人達です。

  • 身体障害者(肢体不自由者、知的障害者、内部障害者、視覚障害者、聴覚障害者)
  • 傷病者
  • 介護施設にまで入るまでではないが、自身で避難ができない高齢者(体力の衰えまたは、認知症がある)
  • 切迫早産などの安静を求められる妊婦
  • 理解力・判断力が乏しい乳幼児や子供
  • 日本語のわからない外国人

災害弱者の人達は、

  1. 自分の身に危険が差し迫っていても「察知する能力がない、または困難」「察知しても最適な行動がとることが困難」
  2. 危険を知らせる情報を「受け取ることができない、または困難」
  3. 危険を知らせる情報を受け取ることができても「適切な行動をとることができない、または困難」

な者であり、この条件に一つでも当てはまる人は「災害弱者」に当てはまると平成3年度版防災白書で定義されています。

また、日本赤十字社の「災害時要援護者対策ガイドライン」では、避難生活における要配慮者についても以下のように明記されています。

・病気や障害などにより薬や医療器具を要する者
・手すりや洋式トイレなどバリアフリー化されていない避難所などで介助を要する者。こうした要配慮者向けの「福祉避難所」が普及しつつあるが、未だ不十分とされる
・感染症への抵抗力が弱く、避難所で病気にかかりやすい者
・被災により精神的障害が増幅される者

東日本大震災の教訓もあり、内閣府や総務省などの指導の下「災害弱者」への避難支援計画が全国の市区町村で進められています。

家族だけでは難しい要介護者の避難

家族だけでは難しい要介護者の避難

大災害が起きたとき、災害弱者のなかでも自力では動けない要介護者や支えている家族は「どうすることもできない」「避難をあきらめている」といった考えの人も多いそうです。家庭内介護をはじめ、特に周りに頼る人がいない、相談する人もいないといった方たちは自分達だけで何とかしようと考えてしまうのです。
このような人達に、「どうかあきらめないで、迷惑だと思わずに支援を受けてください」と言いたいです。

まずは、相談窓口で相談をし、支援者を探すことから始めてください。
地域の民生委員や、行政にある社会福祉課に介護者の状態や災害時に支援を受ける方法などを相談してください。また、高齢者の介護の場合は、地域包括支援センターに相談をしましょう。その後の要介護認定の申請など様々な手続きや、体調の把握など介護・医療・保健・福祉などの側面から高齢者を支援してくれます。

災害時に自らの力での避難や家族だけで要介護者を避難させることが困難であるとなった場合、各市区町村で作成している「避難行動要支援者名簿」への申請を促されると思いますので登録しましょう。

「避難行動要支援者名簿」に登録すると、いざ避難が必要になったときにスムーズに避難ができるように地域支援者(自治会・自主防災組織、民生委員児童委員、警察・消防機関、その他避難関係者など)に登録者の情報が共有されて、災害時における避難支援や日ごろの防災活動で活用されます。
緊急時には、名簿をもとに避難行動要支援者の安全確保、安否の確認、救出・救助、避難誘導などが行われます。

「避難行動要支援者名簿」の作成は、内閣府や総務省消防庁が推し進めているものですので、まずは支援者が要配慮者の把握をするためにも、要介護者のいるご家庭は行政に相談をしてください。

要配慮者は「福祉避難所」

要配慮者は「福祉避難所」

避難所生活が長期に及ぶと考えられた場合、「災害弱者」のうち通常の避難所での生活が困難な人達が適切な対応のもと避難ができる「福祉避難所」が設けられます。

福祉避難所の対象者となる人は以下の人達です。

  1. 身体障害者(肢体不自由者、知的障害者、内部障害者、視覚障害者、聴覚障害者)
  2. 精神障害者
  3. 介護が必要な高齢者(特別養護老人ホームなどの施設の入居者は除く)
  4. 人工呼吸器、酸素供給装置等を使用している在宅の難病患者
  5. 妊産婦、乳幼児、病弱者、傷病者

避難する際には障害者手帳や要介護・要支援認定書、母子手帳など身体状態がわかるものを持参しましょう。

参照【参考】避難行動要支援者(災害時要援護者)への対応 9.福祉避難所

参照【参考】福祉避難所の確保・運営ガイドライン|平成28年4月 内閣府(防災担当)

まとめ

災害時に介護が必要な高齢者や障害者など「災害弱者」の避難はどうする? まとめ

大災害の時に支援が受けられるか、どこに支援を必要としている人がいるかは、まずは災害弱者自身やご家族が声をあげなければわかりません。

災害弱者ということで災害の被害者になってしまわないように、相談窓口を利用して担当者といろいろと話してみてください。普段のお困りごとや悩みも親身になって相談にのってくれることと思います。
また、内閣府が行った調査では「避難行動要支援者名簿」や「福祉避難所」など、要支援者であっても知らない人が多いということがわかっています。

身近に災害弱者がいる場合で、このような支援を知らない人がいるようでしたら是非教えてあげてください。

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